吉靴房の取り組み

無駄にしないをモットーに

吉靴房では主に牛革と豚革、それとメイン素材として牛ヌメ革を使っています。
まずなぜ吉靴房では牛と豚の革しか使っていないのか。
これは革という存在が、人間が肉を食べた後でしか基本的に作られないからです。

要は捨てずに利用しているという状態です。
人間はどうしても他の生物から栄養を摂取しなければならず、これを美味しんぼでは原罪と呼んでいましたが、避けることができないことだと思います。

だからこそ、食べた部分以外もただ捨てるのではなく感謝の意識を持って使う。
革はそういう意味で、人間の英知の産物といえると思います。

僕自身日常的に食べる肉は牛、豚、鶏で、それ以外は特別な機会がない限りなかなか食べる機会がありません。
そういった理由で靴屋としてつくりて野島が使う革は牛と豚のみとしています。
それも基本的にほとんど捨てることがないように裁断するということを目指しているので、上記の画像のような型入れになります。

そもそも「かわ」を革と表記することには意味があります。

皮は英語でSKIN
革は英語でLEATHER
の意味です。

すなわち、皮は皮膚やなめされていないもの革は加工としてなめされているものということになります。

牛革は年齢と性別で種類が分かれます。

カーフ 生後6ヶ月くらいまでの子牛の革
キップ 生後6ヶ月から2歳くらいまでの中牛革
カウ  2歳以上の成牛革
ステア 生後3~6ヶ月以内に去勢したオスの成牛革
ブル  3歳以上の繁殖用オス牛の革

このように分かれています。若いほどキメが細かくて薄く、大きいほど厚くキメが荒いです。
吉靴房の商品のアッパー部分はほとんどキップを使っています。

カーフほど薄くなく強度があり、カウよりも肌目が決め細やかだからです。
ヌメ革とは植物タンニンなめしを施された革で、染色や塗装仕上げをしていない革のことを言います。

表面に加工をしていないので、水を吸いやすいのですが、濡れた状態で成形するとそのまま乾いてその形がキープされる特徴があります。
それを利用したのが靴の中底や革下駄や、工房のランプシェードだったりします。
熱に反応しやすいというのも特徴で、低い温度での焼印がしやすいです。

吉靴房ではこういった形で革と接しています。
これからも「無駄にしない」をモットーに、屠畜の過程で出る皮からタンナーを経て革になる工程にも敬意を払い革と繋がって行きます。